「やっぱいいよなぁ……‘千紗’先輩……」
「そうかなぁ」
クラスメイト達がため息と共に窓越しに見ているのは、
中庭でお弁当を食べているぼくの姉さん‘千紗’だ。
暖かな日差しの中で溢れるような笑みを浮かべて、多数の視線を浴びながらそれを
意識せずにいられる姉さん。
「くっそう……どうして俺はお前じゃないんだろうな……」
そんなことを言いながら、小突かれる。
「そんなにぼくが羨ましいんだったら、いっそ代わってあげたいくらいだよ……」
「お前はまるでわかってないっ!」
ぼくの不用意な発言に、両サイドから肘が脇腹に入る。
姉さんの弟であることが、ほんのちょっぴりだけど、誇らしかった時期があったんだ。
だけど、みんなが知らない姉さんの貌(かお)が…。
「ただいま」
「おかえりー」
「あう……」
「ん~~?どうしたのかな?みんなの憧れの姉さんに出迎えられて、照れちゃったかなぁ?」
驚いたぼくを姉さんがニヤニヤして見つめてくる。
「それじゃ、今日は何をしよっかなぁ……」
外では決して見せない姉さんの表情。
この時間が長ければ長いだけ、ろくでもないことを言い出すのは確かで。
この時間がアッという間に過ぎ去るとろくでもないことがおきる時間がすぐにやってくるということで……。
結局ぼくには姉さんが何を言い出すのか黙って待っているしかない。
「そうね、いずれにしてもまずは脱いでもらわないとね」
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